毎日、何千人もの人が金融機関を訪れ、日々の出費のために余分な現金を引き出しています。このような取り引きの1件1件は小さくても、毎日数百件、数千件の取り引きが支店で行われる場合は、引き出しの現金の合計額はとても多くなります。ですが、各支店の日常業務は固定キャッシュフローによって制限されており、事前に顧客の必要額を知らずして業務を行なうことには課題があります。顧客は銀行には十分な現金があると考えているので、銀行は対応するために、現金を置きすぎることなく十分だと自信を持つには、どうすればいいのでしょうか。
コスタリカの大手金融機関Grupo MutualのJean Carlos ZamoraさんとFrancisco Aguilarさんが率いる品質改善プロジェクトチームは、55支店の取り引きを支えるために、金庫の現金額に焦点を当てました。チームは、Minitab Statistical Softwareを使用して、各支店のキャッシュフローを調査し、各金庫の最適な現金額を割り出しました。Lean Six Sigma手法を使って、データ分析を行い、現金使用量を増やしてコストを減らしました。また、顧客サービスの質に影響を与えることなく、資金を再投資して収益を110万ドル増大しました。
課題
Grupo Mutualの55支店は、企業経営を支える一定のキャッシュフローを確保しているものの、支店の顧客が預金よりも多くを引き出す場合は、追加の現金が必要になることがあります。各支店は、現金不足を回避し、必要なサービスを提供できるように、追加的な現金を金庫に保管しています。この予防策があっても、日々のニーズの調査がなかったため、現金が不足する支店や、現金が過剰になる支店が発生していました。各銀行に必要な現金がないことの代償は大きいです。顧客には、3つの望ましくない選択肢を提示することになります。それは電子送金で銀行から資金を受け取る、委託取り引きを1~3日待つ、本店に行く、です。
Grupo Mutualのプロジェクトチームは、55支店それぞれの最適な保管金額を特定し、キャッシュフローのマイナスや余剰を回避するようキャッシュフローを調整しました。チームは、Lean Six Sigma手法とMinitab Statistical Softwareを使用して、収益を110万ドル増やし、現金使用量を40%増やし、コストを60%削減しました。
各支店の金庫に理想的な金額の現金を維持することで、コストを削減し、顧客満足度を維持できます。チームは、支店間のキャッシュフローを最適化するために、余資を回避するよう調整する必要がありました。
Minitabによる支援方法
チームは、DMAIC(定義、測定、分析、改善、管理)をプロジェクトに適用し、非生産的な銀行の金庫から最も必要とする支店に現金を転送する効率的なプロセスを作成するというプロジェクトの目標を定義しました。
測定フェーズで、55支店の2年分のキャッシュフローデータを収集しました。中身はコスタリカ・コロンと米ドルの流入、流出、残高、金庫の現金額、ATMの補充、送金です。データは、午前と午後、現金取り引き件数、取り引き金額で区分しました。Grupo Mutualプロジェクトリーダー兼改善スペシャリストJean-Carlos Zamora Moraさんはこう話します。「データベースを管理し、55支店それぞれの約2,000のデータポイントを分析することが最大の課題でした。Minitabは、この問題に対処する上で重要な役割を果たしました。プロセスを改善するにはどこに焦点を当てればいいのかを特定できたので、分析時間が短くなりました。」
分析フェーズはコロンとドルの両方の分散分析(ANOVA)から始めて、銀行のキャッシュフローが月単位でどれほど変化するのかを調査しました。ANOVAで有意差が明らかになったので、MinitabのTukey比較を使用して異なる月を特定し、類似した月をグループ化して分析を合理化しました。
管理図を使用して、データを時系列でグラフ化し、プロセスが安定しているかを評価して、能力分析を実施する準備をしました。
チームはまた、管理図を用いて、各グループのキャッシュフローが安定していること、能力分析のデータ要件を満たしていることを確認しました。適切な管理図を選択して結果の包括的な要約を自動生成できるように、Minitab Assistantを使用しました。
次に、チームはMinitabを使用して、各グループの現在のキャッシュフローの能力分析を実行しました。この分析で、顧客の入金と出金が提供したサービスに比例しているかを割り出し、各支店で使用している現金の割合を確立しました。
各グループで過剰なキャッシュフローが示されました。合計では、各支店の効率的な運営に必要な資金を超える資金が金庫にあったものの、過剰な現金の流通により、金庫から引き出している支店もあれば、使用しない現金を保管している支店もありました。
「支店の95%で現金残高はプラスでした。分析で、顧客のニーズを満たすための手元保有現金が要求の200%以上だったため、投資できる資金がたくさんできました。」とZamora Moraさん。
各グループの能力分析により、大きく節約できる機会が明らかになり、改善フェーズを進める自信が得られました。リアルタイムの管理図を実装することで、経営陣が1日の任意の時点で各支店の現金残高を確認できるようになりました。チャートには、顧客の入金と出金、余資と使用率によるキャッシュフローのデータから定められた現金制限も示されていました。管理者は、余剰現金がある支店をすばやく特定し、追加の資金が必要な支店に現金を動かして、顧客サービスを中断することなく、現金を最大限に活用できるようになりました。
結果
リアルタイム管理図のパイロットテストが成功したことで、チームは新しいツールの使い方を適切な従業員に教育するようになりました。現金移動に関わる従業員は、管理図で各支店の状況に応じて現金を管理することができ、経営陣はキャッシュフローの効率を上げるために戦略的な決定を下すことができます。
多くの品質向上プロジェクトと同様、このプロジェクトには抵抗や予想外の課題もありましたが、データを示したことが、利害関係者から賛同を得るのに重要な役割を果たしました。「このプロジェクトでは、チームの信頼性と成功の可能性を危うくする疑問や状況がありました。ですが、Minitabでのデータ分析の精度と信頼性に力をもらいました。」とZamora Moraさん。
プロジェクトの結果としてもたらされた変更により、現金使用量が40%増加し、送金コストが60%削減されました。また、新しいプロセスで、保険費用が削減され、現金の保管と輸送に関連するリスクが軽減されました。プロジェクト全体で、収益が110万ドル増加し、銀行の収益性と各支店がサービスを提供する顧客のニーズとの間に、よりバランスの取れた関係が確立されました。
組織
Grupo Mutual
概要
- 42年間営業している金融機関
- コスタリカで900人を雇用
- コスタリカで55支店を経営
- サービスには法人や個人向けの住宅ローンや債券の処理も
課題
銀行支店間の現金の移動を最適化して、マイナスのキャッシュフローと余資の両方を回避する。
使用された製品
Minitab® Statistical Software
結果
- 現金使用量が40%増加
- 送金コストが60%低減
- 収益が110万ドル増加