データ分析による新しい電力消費予測手法

私達の多くが、予想と予算を超える電気料金にショックを受けた経験があります。家庭では、照明を使用していないときに消す、電力効率の高い電球に交換する、その他の一般的な方法で電力消費を減らすことで対応できます。

ですが、このように簡単に変えられない状況で日常活動を続けなければならない場合はどうなるでしょう?電力コストを予測し、現実的な予算を立てることが最優先事項になります。これは多くのメーカーが直面している課題です。生産目標を達成しながら電力使用量を削減する方法がないため、使用量を正確に予測して、十分な情報に基づいた経理上の意思決定を行うことを目指しています。

これは、タイの半導体工場がMinitab Statistical Softwareを使用して、変動する電力負荷を調べた取り組みです。多くの電子機器の基礎となる半導体材料の生産は需要が高く、工場の設備はほぼ連続して稼働できなければなりません。プロジェクトチームは、データ分析を使用して、利益を最大化するために最も正確な電力消費予測方法を割り出すことにしました。

課題

予測モデルは、データのパターンを特定し、そのパターンを使用して、特定の変数(この場合は工場の電力消費)が将来どうなるかを予測します。プロジェクトチームは、タイ首都圏配電公社の3年間の履歴データを、6つの確立された予測モデルと、このプロジェクト用に作成された1つの新しい方法を使用して、分析する必要がありました。新しい方法には、この工場の半導体製造工程に固有の因子が組み込まれています。

送電塔

プロジェクトチームは、Minitab Statistical Softwareを使用して、電力消費の最適な方法を決定し、コストを削減することを可能にするデータを分析しました。

各予測方法は、6か月先の工場の電力負荷を予測します。この結果は、過去のデータと比較できます。プロジェクトチームは、予測方法の正確さを誤差で表す平均絶対百分率誤差(MAPE)を計算することで、どのモデルが最も正確な予測をするのかを判断できます。

プロジェクトチームは、各方法を評価し、MAPEが最も低いモデルを使用して、電力コストを評価し、適切な予算を作成し、健全な財務上の意思決定を行う必要がありました。

Minitabによる支援方法

プロジェクトチームは、6つの異なる時系列分析を調べました。この分析は、単純な予測と平滑化の方法を採用します。各モデルは、傾向、季節性、サイクル、不規則な動きなど、一定期間収集したデータのさまざまな成分を強調し、成分の推定値を将来に拡張して予測を提供します。プロジェクトチームは各モデルを使用して、6か月先の電力使用量を予測しました。

まず、傾向分析手法を使用しました。一般的な傾向ラインを電力消費データに適合させるものです。この分析では、一定期間上下する長期的な傾向が表示されます。

次に、問題をサブ問題に「分解」する能力から分解法と言われるようになった方法を使用して、傾向分析方法に含まれていなかったデータの成分を調べることができました。電力消費の時系列データを季節性、サイクル、ランダムな変動などの追加部分に分割することで、各成分の影響をモデルの予測に組み込むことができました。

時系列分解プロット、kWH

上記の時系列プロットでは、データが4つの部分に分解されています。これで、傾向と季節性を評価できます。

プロジェクトチームは、データの短期的な変動を滑らかにし、長期的な傾向とサイクルを強調するために、時系列の連続した観測値を平均して移動平均を計算しました。このモデルでは、季節性、サイクル、ランダムな変動別に作成された個々のデータポイントが近似されるため、平滑化されたデータセットで見つけにくい重要なパターンが明らかになります。

チームは、単純指数平滑化を使用してデータを表示することで、さらに別の視点を得ました。単純指数平滑化では、時間の経過とともに指数関数的に減少する重みをデータポイントに割り当てます。この手法で、最新のデータに重点を置き、工場の電力消費を予測しました。

データに傾向がある場合、単純指数平滑化は最適ではないため、プロジェクトチームは、時系列の傾向の可能性を考慮して、二重指数平滑化を使用する2番目の成分を導入しました。この取り組みでは、時系列の古い観測値への重みを減らしますが、それぞれに異なる定数を使用して傾向と傾きを平滑化します。

プロジェクトチームは、二重指数平滑化を拡張して傾向と季節変動を含めるために、Winters法を使用して、水準、傾向、季節性の3要素の動的推定値を計算しました。

Winters法プロット、kWH

上記のWinters法プロットは、時系列の傾向と季節性を示しています。

プロジェクトチームは、Minitabで提供されるさまざまな予測および平滑化の方法により、この異なる取り組みのそれぞれと、工場固有の因子を組み込んだ方法を用いて、データを簡単に分析、表示、評価することができました。各方法の正確さは、各モデルの結果を実際のデータと比較することで評価しました。

実kWh対各方法の時系列プロット

上記の時系列プロットでは、6か月間の工場の実消費量kWhと、同じ期間の各モデルの予測電力使用量を比較しています。実際の消費データの時系列と、プロジェクトチームの新しい方法の予測は、比較しやすいように強調表示されています。

プロジェクトチームが考案した予測方法では、半導体工場の工程に関連する特定の要因(機械の要件、機械のアイドル時間、各状態で使用されるキロワットなど)が組み込まれ、電力会社から提供された電力使用量の生データが調整されました。プロジェクトチームは次に、確立されている各モデルの結果を独自の方法の結果と比較しました。

結果

プロジェクトチームは、時系列プロットを作成し、確立された各方法のMAPE値を計算した後、各方法を実際の電力使用量データと比較し、その予測精度がすべて類似していることを見つけました。ですが、プロジェクトチームの新しい方法に関連付けられたMAPE値は2.48で、確立されているモデルよりも著しく低く、工場の将来の電力消費を予測する最良の方法になっています。

プロジェクトチームは、Minitabでさまざまな時系列分析を構築して適用する機能により、テストされていない新しい方法を確立されている方法と簡単に比較できました。データ分析により、独自モデルが他の方法よりも優れていることを確認でき、自信を持ってモデルを使い始めることができました。

この事例は、「International Journal of Advanced Research in Computer and Communication Engineering」に2013年10月10日に掲載されたVol.2のIssue 10の記事です。

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組織

タイ・ノンタブリーの半導体メーカー

 

概要

  • 1984年創設
  • 従業員数1,300人以上
  • フラッシュメモリ製品の組立・検査など

 

課題

コストを削減し、意思決定を支えるのに、最適な電力消費予測方法を選択する

 

使用する製品

Minitab® Statistical Software

 

結果

  • 6か月先の電力消費量を予測するための最適な方法を割り出しました
  • 電力消費コストを削減しました
  • 他の工場、事業にも応用できる新たな手法を確立しました